市川市のRC外断熱工法 地下室のある家
年々体に堪えはじめた建替え前の家
雑誌にも沢山紹介されていた有名建築家さんの手掛けた素敵な木造住宅に住まわれていたお客様。
L型の2階建の壁6面のうち3面がガラスの壁という大胆なつくりでした。けれども、家庭用エアコンでは夏場の冷房が効かず、しばらくして業務用エアコンに買い替えて暮らされていました。
冬は屋内でも吐く息が白くなるほど寒かったとのこと。新築当初は大変満足しておりましたが、お歳を重ねるごとに屋内の環境が体に堪えるようになり、ガラス壁を断熱改修する検討をはじめました。ところが、検討の只中、3.11の震災が発生。お客様は堅牢なRC造への建替えを決断したのでした。
地下水位2mの敷地で地下をつくる
風致地区で建ペイ率40%、容積率80%の非常に厳しい建築制限がある地域では 3階建て難しく、必要な間取りを確保するには地下室を設ける以外、方法がありません。
ところが、昔は海だったこの地域。小石一つないサラサラの砂質土を2m掘れば、池のように水が溜まります。そこで、施工にあたっては敷地沿いに吸水管を打込み、モーターで数週間昼夜を問わず水を汲み上げ続けて地下水位を下げた状態で山留めをするウェルポイント工法を採用しました。
躯体コンクリートには特殊な防水材を混和させ、二重壁で防水対策をとります。地下にはドライエリアを設け日当たりも確保いたしました。
RC外断熱の長所を生かした蓄熱式床暖房とドイツの熱交換型換気システム
この建物は鉄筋コンクリート造外断熱工法。外壁はタイル張りのため、炭酸カルシウムでできた湿式外断熱材を型枠に打ち込んでコンクリートを打設しました。
換気はドイツのスティーベル社の高性能な熱交換型の全館換気とし、主暖房に蓄熱式床暖房とオルスバーグ社の蓄熱式床置型暖房機で、緩い連続運転をさせて家全体が陽だまりのようにポカポカと暖かい温熱環境を計画しました。
素材と居心地にこだわったLDK
2階のLDKに広がる黒茶のウォルナット無垢フローリングの端には、スチールで製作した白い螺旋階段が陽射しの差し込む屋上に向かって伸びています。
広いリビングの天井は、構造の先生の尽力で高天井でも梁が凸凹にならないようにしました。照明の埋め込まれた造作の壁面収納面には、熟練の石工職人が作り出した天然石の細いボーダーをアクセント張りし、壁の上部に埋め込んだコーブ照明で自然な印影が浮かび上がり豊かな表情を生みます。
リビングの奥は、真南に向いた高さ2.6m、幅3.5mの大きな窓。RC外断熱工法の高断熱壁とのバランスを考慮し、建物の窓には大きさと機能にメリハリをつけて配置をしました。ウォルナット床の黒茶に、落ち着いた空色のソファ、陽射しで薄卵色に照るブラインドの組合わせは、上品な大人の空間を醸しています。
壁はエコ壁紙「ルナファーザー」にカイム社「ビオシール」塗装仕上げ
壁の仕上げにはビニルクロス、珪藻土、漆喰、EP塗装など色々ありますが、今回は、塗装仕上げの予定でした。「ツルツルとした艶やかでフラットな壁にしたい」というご要望がありましたが、石膏ボード下地にパテ処理後の塗装仕上げでは、将来的に軽微なクラックも心配されるので、石膏ボードの上にドイツのエコ壁紙「ルナファーザー」で一番平滑な紙品番を選び、地下室のカビ対策としてミネラル‐アルカリ性でカビが発生しにくいカイム社「ビオシール」塗料で白く塗装をしました。
一般的なFRP浴槽とFRA浴槽の違いとは
一般的に浴槽というのはFRP(ガラス繊維強化プラスチック)製品ですが、今回はFRA(ガラス繊維強化アクリル)のArtis(アルティス)のオーダーシステム一体成型浴槽を採用し、タイル張りのオーダーバスにしました。FRA浴槽は表面にガラス繊維アクリルを採用し、裏面にガラス繊維強化プラスチックで補強しており、FRPよりも傷に強く美しい光沢があります。浴槽の純白度合いが高いため、お湯を張ると水面が美しく澄んだ藍白(あいじろ)色になります。
CUCINA(クチーナ)の造作洗面化粧台
造作木製玄関ドア、グレーチング床と地下ドライエリアの開口
2階リビング前のベランダ
所在地:千葉県市川市
竣工:2013年9月
用途・規模・構造:専用住宅・鉄筋コンクリート造・地下1階 地上2階 PH1階建
断熱:外断熱/EPS湿式張り+レオトップ打込み
敷地面積、建築面積:敷地面積 144.76㎡、建築面積 84.97㎡
延床面積、各階面積:延床面積 207.37㎡
設計:株式会社工房 一級建築士事務所