外断熱先進国ドイツで実感した「日本の家は寒い」
玄関を入るとすぐにリビングと、その向こうの庭までは見渡せ、心地良い。
螺旋階段は奥様の足のリハビリにもなり、読書の椅子にもなる。
ドイツでの生活拠点はシュツットガルトで、宗谷岬よりも北に位置するが、冬、たとえ外は厳寒でも、公共施設も住宅も建物のなかには暖かさと快適さがあった。そんな外断熱先進国の家の暖かさを身をもって体験したこともあって「建て替えるときは絶対に外断熱」と決めていた。以前からお住まいの土地に、住居と賃貸住宅2戸が一体となった建物を建てることになった。「前の家がすごく寒くて、リビングにガス暖房がありましたが、リビングを一歩出るともう寒い。光が入らないので、昼間でも電灯を点けていました」と奥様。そういうわけで、第1に外断熱、第2に光が入ること(ただし、直射日光ではなく)が、この家づくりへの要望だった。RC(鉄筋コンクリート造)なので、もともと外断熱との相性はバツグンにいい。コンクリートは蓄熱するので断熱効率がよくなるのだ。さらに、首都圏でこの工法の場合は通常50㎜厚の断熱材を使うところ、ここでは70㎜厚として、より断熱性能を高めることにした。光に関しては、吹き抜けとベランダを組み合わせることによって、光が柔らかく回るように工夫した。
玄関脇へのアプローチ。タブローがお出迎え。
裏庭。前の家からの樹木をほとんど残した。中央は古い柿の木。パノラマで撮影。
家中を温度差なく快適にする外断熱の効果。
お引き渡しから約1年、新しい家で四季が過ぎた。冬は「夜、寝る前に暖房を切って寝るんですが、そのとき布団が冷たくない。朝、起きたときの温度がだいたい18℃で、その温度がどこの場所も一定で、家のなかに寒いところがないというのがいいですね。玄関も寒くないですよ」とご主人。暖房は床暖房と、玄関、リビング、2階廊下など要所に設置したパネルヒーターを使う。パネルヒーターも、ドイツ生活の体験からご夫妻にとてあたりまえの暖房器具になっている。
首都圏の家ではあまり馴染みがないが、寒さの厳しい北海道の家ではよく使われている。柔らかい輻射熱で家中を温度差なく快適に温めてくれる。夏は「直射日光が入らないので、前のような暑さは感じませんね。外が35℃くらいの日でも、帰ってきてあわてて冷房つけるというようなこともなかったですね」。外断熱の効果は大きい。同じ構造でつながる2戸の賃貸住宅のほうも、きっと快適だろう。
さて、1階と2階をつなぐ階段は、かつて脚を傷められた奥様のリハビリのためにあえて螺旋にした。ただ、将来のことも考えて、リビングの一角には構造にホーム・エレベーター用の穴が設けられている。基礎もそこだけ特別になっている。
北道路に面して1階は車庫。2階は右側の階段から上がって賃貸住宅が2戸。
レンガの壁が美しい。
裏庭には、リビングから続くウッドデッキ。セランガンバツ材は風雨に強く、曲がりが少ない。
屋上では趣味の菜園。ご主人(左)と工房の設計士、現場監督、営業で記念撮影。
螺旋階段を上がった2 階廊下はご主人のギター演奏のスペース。この空間には適度なエコーが効く。
吹き抜けと螺旋階段。そのまま屋上へと続く。
リビングから車庫へダイレクトに続く。シャッターを開けると、すぐに道路が見える。
所在地:東京都杉並区
竣工:2013年12月
用途・規模・構造:専用住宅・鉄筋コンクリート造・地上2階 PH1階建
断熱:外断熱/EPS湿式張り
敷地面積、建築面積:敷地面積 230.88㎡、建築面積 107.47㎡
延床面積、各階面積:延床面積 190.74㎡
設計:株式会社工房 一級建築士事務所