バランスと距離感が、絶妙に考慮された2世帯住宅

2階リビングにて、Ⅰさんご夫妻と生後半年の娘さん。
奥の壁紙の色をかえたことで、部屋のなかが優しく明るいイメージに。

住宅雑誌などで「うまくいく2世帯住宅」といった特集企画があれば、ぜひ紹介したい2世帯住宅である。つまり「住み分け」と「共用」とのバランスが絶妙なのだ。施主のⅠさんも、実はそのあたりをいちばん考慮した。2世帯で住む先輩たちの話も聞いて、参考にしたという。
Ⅰさんご夫妻と生後半年のお子さんが2階に、Ⅰさんのお母様が1階に住んでいる。キッチンとユーティリティ(洗面、洗濯)とトイレは別々、ただし、玄関は共用でバス(1階)も共用とした。
それぞれの生活は別個だから、たがいに余計な気遣いをしなくて済む。かといって不必要に設備をダブらせていないので、経済的でもある。普段、食事は別々だが、たまには一つの台所で料理をして、みんなで一緒にご飯を食べることもある。距離感とり方が、とてもうまくいっている。「2世帯というよりも、むしろ家がもう一軒あるという感じですね」とⅠさん。
2階のⅠさんご夫妻の住居では、LDKと寝室とご主人の書斎が、実に合理的に収まっている。
「プライバシーを守りながらも、開放的なところがほしかった」というⅠさんのご要望で、間取りの真ん中に中庭を設けた。
外壁の色は落ち着いたダークグレーだが、中庭の壁だけは白にした。これでだいぶ明るくなった。
工房得意の「RC外断熱」なので、もちろん断熱性能の高さについては折り紙つきである。

玄関のある東側。ご夫妻と愛娘とお母様と。

西側は大通りに面している

女性設計士ならではの気配りが見える家。

1階では、お母様が3匹の猫と一緒に住んでいる(人見知りの猫は、残念ながら取材中まったく顔を見せてくれなかった)。
「納戸」だと思ったスペースは、実は猫の部屋であった。
壁には猫の階段が設置されていて、その上は猫のロフトになっている。階段室の手前には、ちょっとしたスペースを利用して、猫が楽しく出入りできるような秘密の猫トンネルがつくられている。
お母様の居住スペースは、まるで猫とのもうひとつの「2世帯住宅」のようでもある。
さて、この土地で生まれ育ったⅠさん、以前住んでいた家が老朽化したので、今度はRCで建て替えようとネット検索して工房を知った。内覧会にもモデルハウスにも行き、工房に決めた。
設計担当は女性で、家のなか全体が柔らかいイメージになった。シンプルでいかにも使いやすそうなキッチンとダイニングなど、随所に女性らしい気配りがされている。
「積算も細かいところまでひとつひとつ丁寧にやってくれたし、建ったあとも、連絡すればすぐ来てくれます。住むほうとしては、建ってからが生活のスタートなので、すぐ対応してくれるのは本当に助かります」と、Ⅰさんの満足度は高いようだ。

1階お母様の居室。右にキッチン、中央の2部屋が猫の住居。
左は1階専用の中庭。

猫の部屋。ツメを研いで、ゴハンを食べて、階段を上がって、ロフトでお昼寝。

階段下にある猫専用の秘密のトンネル。

2階のダイニングとキッチン。ものがスッキリと収まって使いやすそう。

階段室のスペースを利用してご主人の書斎をつくった。
不思議な空間。

所在地:東京都練馬区
竣工:2014年4月
用途・規模・構造:専用住宅・鉄筋コンクリート造・地上2階建
断熱:外断熱/EPS湿式張り
敷地面積、建築面積:敷地面積 123.70㎡、建築面積 70.74㎡
延床面積、各階面積:延床面積 124.87㎡
設計:株式会社工房 一級建築士事務所